近年、新車購入の支払い方法として「残価設定クレジット(残クレ)」が急速に普及しています。しかし、この残クレを利用した消費者から「思っていたよりも支払いが多い」「契約の制約が厳しい」といった不満の声が増加。
その結果、2024年11月に公正取引委員会(公取委)が新車販売における不適切な取引方法について注意喚起を行いました。特にトヨタの販売店での強引な残クレ契約が問題視されており、今後の業界動向にも影響を与えそうです。
この記事では、残クレの仕組みや問題点、そして賢い車の購入方法について詳しく解説します。
もくじ
残価設定クレジット(残クレ)とは?仕組みを解説
残クレとは、数年後の車の下取り価格(残価)をあらかじめ設定し、その残価を差し引いた金額を分割で支払うローンのことです。
例:500万円の車を残クレで購入する場合
- 3年後の残価を200万円と設定
- 残りの300万円を分割で支払い(例:月々5万円)
- 3年後に以下の3つから選択
- ① 新車に乗り換える(新たな残クレ契約)
- ② 残価200万円を支払い、車を自分のものにする
- ③ 車を返却して契約終了
この仕組み自体は、新車を手軽に購入できるメリットがありますが、実際には多くの制約があるため注意が必要です。
残クレの問題点:なぜ消費者にとって不利なのか?
1. ローンよりも割高になる
一見、月々の支払い負担が軽く見えますが、ローンの金利が高く、結果的に通常のローンよりも総支払額が多くなるケースが多いです。
また、新車に乗り換え続けると、ずっとローンを払い続ける状態になるため、支払いが終わらないという落とし穴も。
2. 走行距離やカスタマイズの制限
残クレ契約では、以下のような制約があります。
- 年間走行距離の制限(1万km~1.5万km程度)
- 社外パーツの取り付け禁止(ホイールやマフラーの交換不可)
- 車の状態を維持する義務(内装の汚れや傷にも厳しい)
もしこれらの制約を超えた場合、追加料金を請求されることもあります。
3. 市場価格が下落すると追加請求が発生
契約終了時に、市場価値が設定した残価よりも下がっていた場合、その差額を消費者が負担する必要があります。
例えば、3年後の残価200万円で契約した車が、実際には150万円の価値しかなかった場合、差額の50万円を支払わなければなりません。
これは「車の価値の変動リスクを消費者が負担する」という点で、大きなデメリットになります。
公正取引委員会が指摘した違法級の販売手法とは?
公取委が2024年11月に公表した注意喚起の内容には、特にトヨタの販売店での強引な残クレ契約が問題視されています。
具体的な問題点として、以下のような手法が報告されています。
1. 現金購入を断られる
「現金一括や銀行ローンでは販売できない」と言われ、強制的に残クレ契約を勧められるケースが発生しています。
2. 値引きの条件としてローン契約を強制
「現金や銀行ローンの場合は値引きできない」「ローン契約なら特別価格」といった手法で、消費者に不利な条件を押し付けています。
3. 高額なオプションの押し売り
- ボディコーティング(10万~20万円)
- 室内消臭・抗菌コーティング
など、実際には数千円~数万円でDIYできるものを高額で販売するケースが多発しています。
4. 名義を販売店に登録することで転売対策を口実にする
特にアルファードやランドクルーザーのようなリセールバリューの高い車で、「転売防止のために名義は販売会社にする」というルールが設けられています。
しかし、これは転売対策ではなく、ローン契約を強制するための手法と考えられます。
残クレのリスクを回避するための対策
1. 現金一括 or 銀行ローンを利用する
- 現金一括が最もコストが安い
- 銀行ローンはディーラーのローンよりも金利が低い
2. 他の販売店で比較検討する
同じ車種でも、販売店によって条件が異なります。
「トヨタ店、トヨペット、カローラ店」など、系列の異なる販売店を回ることで、より良い条件を引き出せる可能性があります。
3. 不必要なオプションを断る
- コーティングは自分で施工可能
- 不要なオプションを省くことで数十万円の節約が可能
4. 買取専門店で査定を依頼する
ディーラーの下取り価格は、買取専門店よりも低く設定されることが多いため、一括査定サービスを利用し、高値で売却することが重要です。
まとめ:残クレ契約は慎重に判断を!
- 残クレは制約が多く、最終的な支払い額が高くなる可能性がある
- 公正取引委員会が、トヨタなどの販売店の強引な販売手法を問題視
- 現金一括や銀行ローンを検討し、不利な契約を回避することが重要
車の購入は大きな買い物。目先の「月々の支払い額の安さ」に惑わされず、総支払額や契約内容をしっかり確認することが大切です。
皆さんも、残クレ契約を勧められたら慎重に検討し、本当に納得できる条件で車を購入しましょう!